なぜ日本では新型コロナウイルスの死者が不思議なほど少ないのか

4月に新型コロナウイルスと日本人というタイトルで、今日本の対策と海外のそれとを対比して、欧米よりも緩やかな規制によってもはるかに少ない感染者・死者数という結果が出ることを期待していることを記した。BBC News Japanというブログに2020年7月5日付けで掲題のような解説記事が掲載された。

要旨は下記。

  • 新型コロナウイルスは種に高齢者の命を奪うこと、長時間の濃厚接触で感染リスクが大幅に高まることが知られている。日本の人口に占める高齢者の割合は世界一高く、また大都市の人口密度が高く過密状態で有名な満員電車が主な移動手段である。
  • また、「1にも2にも検査」という世界保健機関(WHO)の助言に日本は聞く耳を持たなかった。さらに、欧州のような強制的なロックダウンは実施しなかった。
  • それにもかかわらず、感染者は2万人に満たず、死者は1000人を下回っている。
  • ある政治家が「日本人は民度が違う」と言って非難を浴びたが、多くの日本人と、多少の科学者らが、日本はどこか違うと考えているのは間違いない。「X因子(Factor X)」が日本人を守っているのだと。
  • 日本人が過去にCOVIDにかかり、歴史的な免疫を獲得したという説もあるが、定かではない。
  • 日本は流行初期に2つの重要なパターン(近接した環境での激しい息遣いで多く発症する、感染拡大はウイルス保持者のうちのごく一部が原因となっていること)を発見した。これが「3密」回避の呼びかけにつながった。
  • 4月7日に政府は強制力のない緊急事態宣言を発令した。この対策が遅れれば、ニューヨークやロンドンと似た状況になっていたかもしれない。

ここまでは主にFactsだが、記事は次のような問いを発している。

  • 日本政府は住民に対して、細心の注意を払い、混雑した場所に近寄らないこと、マスクをすること、手を洗うことなどを求めてきた。そして日本ではほとんどの人が、その通りに行動してきたのだ。
  • 日本が封鎖も外出禁止もせず、今のところ感染者数と死者数を少なく抑えている事実は、他の国が進むべき道を示しているのだろうか?答えはイエスであり、ノーでもある。

記者はルーパート・ウィングフィールド=ヘイズという英国のジャーナリストであり、このような問いで記事を終わらせることで、やはり本人の腑に落ちなさが見て取れる。欧米の民主主義、自由主義、個人主義のコンテクストからは、例えばイタリア、フランスなどのような強制力を持った政策でなければ実効性がないと考えるようだ。日本の自粛要請については、外国のメディアは何をやっているのだ、こんなことで何の効果があるのだという論調だと聞いている。記事の中で英キングス・コレッジ・ロンドン公衆衛生研究所長の渋谷健司という教授が、「日本人は厳格な措置がなくても、ちゃんと従った。運が良かったと同時に、意外だった」と述べている。この教授にとって「意外」な推移で良かった。「運が良かった」というのは、何を以て運が良かったのか、何の要素が科学的に検証可能で「運」ではなくて、何の要素が「運」だったのか私には判然としないし、これはいろいろな人の見方で変わると思う。とりあえず今時点では、政府の判断と、国民の反応がうまく噛み合ったということができると思う。政府の判断と国民の行動を「うまく噛み合わせる」ということについて、欧米では、「自粛」それも「要請」という生ぬるい政策では国民は従いもしないということが常識であるので、日本のやり方がこんなことで感染の拡大を防ぐことなどできはしないという批判になっているのだろう。しかし、上述のように国内の感染者数は2万人に満たず、死者数は1000人を下回っている数字を前に、そう言った人たちは今どう思っているのだろうかと不思議だった。当然日本も欧米も科学的知見をもとに対策のアプローチを取っているはずだが、そのアプローチの背後には文化、国民性という要素が多く影を落としているので、そこのところが外国人、特にアングロサクソン系の人たちにわかりにくい様相を呈しているのだろう。これこそが「X因子」であり、外国人には理解しがたいものなのだろう。

今は7月19日、緊急事態宣言が解除されて、経済活動が徐々にもとに戻りつつある中で当然予想されているように 感染者数が増加しつつある。この中で、事態がどのように推移するか、また興味深い点が浮かび上がって来るかも知れない。

2020/07/19
んねぞう

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