ヴィオール、ヴィオール属、ヴァイオリン属について
最近Youtubeでバロック音楽を視聴することが非常に多くなってきて、最初に気が付いた違いは私がアマチュア現役時代(20年以上前)と比べて演奏に使われる楽器は古楽器が主流となっていること。その古雅な響きは私を魅了して止まない。その響きの魅力については別稿に譲るとして、その中でビオラ ダ ガンバ、バロックヴァイオリン等の音色に魅せられている。近代楽器と古楽器の違いについて、特にヴィオラ ダ ガンバを始めとして、その他にも見慣れない楽器、例えば立てて弾くヴァイオリンのようなものについての自分なりの理解をしておきたいと思い、調べて見た。何故かは知らないがヴァイオリンは完成形で規格化されているとされているが、それとは違い、上述の楽器類は歴史的、地理的にさまざまな栄枯盛衰を辿り、バリエーションがあり、その全貌を完全に把握するのは私には到底無理のようだが、まず私がYoutubeで視聴するのに、取り敢えず擦弦楽器については、この楽器は何?ということがないようにはしておきたい。これが目標。
ここでは、近年バロック音楽の世界で一般的となって来た所謂古楽器のうち、ヴィオール、ヴィオール属、ヴァイオリン属について、その概念、定義等について整理する。
長くなるので、例によってここで一旦切ります。続きを読みたいと言う奇篤な方は↓を押してください
1. ヴィオールの定義
ヴィオールの定義には、2種類の概念がある。
定義① 擦弦楽器の総称
定義② ヴィオ ラ ダガンバのこと(17~18世紀フランス)
2. 定義① によるヴィオール属の概観
ヴィオール属の集合的概念を下図に示す。
定義①による集合のイメージ
「ヴィオール」の括りの下に、「ヴィオール属」と「ヴァイオリン属」の2つがある。ヴァイオリン属の構成としては、ヴァイオリン、ビオラ、チェロがある。これらについては一般的に良く知られている楽器なのでこれ以上言及しない(バロックヴァイオリンについては後述する)。
一方、ヴィオール属の楽器は下記のようなものがある。
■コントラバス
コントラバスは今日一般にヴァイオリン属とされるが、歴史的にはヴィオラ・ダ・ガンバ属の最低音域であるヴィオローネ(イタリア語で「大きなヴィオラ」の意味)が前身で、後にヴァイオリン属の特徴を取り入れたと考えられている。なで肩の形状、平らな裏板、4度調弦、弓の持ち方(ジャーマン式)などに、ヴィオラ・ダ・ガンバ属の特徴を留めている(Wikipediaより)。
実は私も高校時代にコントラバスを弾いていた。ヴァイオリンと違い音を鳴らすのに非常に苦労した。近くに教えてくれる人もいないので、いまだにあの時のやり方で良かったのかわからない。
調弦はヴァイオリン属と違い4度差で、低い方からE-A-D-G。自分の理解のために譜面で表すと
■ヴィオラ・ダモーレ
大きさはほぼヴィオラと同じ、外見的な特徴としては演奏弦がヴィオラは4本だがそれより多いこと(6、7本)、加えて共鳴弦があること、ヴァイオリン属で言うところのf孔の形状が異なることである。viola d’ amore (愛のヴィオラ)と呼ばれるだけあってやや籠った甘い音色である。音域はヴィオラより広い。
調弦は低い方から A – d – a – d’ – f#’ – a’ – d”。自分の理解のために譜面で表すと
参考URL : ヴィオラスペース2016
■バリトン
ヴィオラ・ディ・ボルドーネとも呼ばれ、ハイドンが仕えたエステルハージ侯が愛用したことで知られる。バスのヴィオラ・ダ・ガンバに多数の共鳴弦を加えることにより成立したと考えられている。また、棹の裏側が開いており、弾きながら親指で共鳴弦を直接はじくことも出来た(Wikipediaより)。
参考URL : Baryton Trio Valkkoog – Adagio cantabile – Haydn “Birthday” Trio (Nr. 97)
■リラ・ダ・ガンバ
リローネ (Lirone) とも呼ばれるこの楽器は、時代や地域により形態や弦の数・調弦法が様々であるが、一般にバスのヴィオラ・ダ・ガンバよりやや小さく、糸倉がなくて、糸巻きは指板の延長上にある平板の上で板の面に対して直角に並ぶ。弦の数はヴィオラ・ダ・ガンバよりかなり多く、調弦法はきわめて変則的。おそらく弦一本だけを弾くことはとても難しく、和音奏法の楽器だったと考えられる(Wikipediaより) 。絃は14本、うち2本が共鳴弦と言う例あり
■カントン
フランス語で「5つの音」を意味するカントン (it:Quinton (strumento musicale)) は、5弦のヴァイオリンである。パルドゥシュ・ド・ヴィオール(ヴィオラ・ダ・ガンバ属の最高音域、後期バロック時代にフランスで独奏楽器として愛好され、特異なレパートリーを形成した)のための作品を、ヴァイオリン奏者が弾いて楽しむために考案された(Wikipediaより)。
3. 定義②によるヴィオール
これは冒頭に述べたように イタリア語で言うヴィオラ ダ ガンバと同義である。以下その特徴
■フランス語ではヴィオール(viole)、英語ではヴァイオル(viol)、ドイツ語ではガンベ(Gambe)
■「ヴィオラ・ダ・ガンバ」とは「脚のヴィオラ」の意味で、楽器を脚で支えることに由来する(これに対して「ヴィオラ・ダ・ブラッチョ(=腕のヴィオラ)」と呼ばれたのがヴァイオリン属)。
■ヴァイオリン属と同様に音域の異なるいくつかのサイズがあり、一つの「属」をなす。
トレブル(フランスではドゥシュ、ドイツではディスカント)
アルト
テノール
バス
その他にドゥシュより高いパルドゥシュ(フランス)、バスより低いグレートバス、コントラバス(ヴィオローネとも言う)がある。
■形状、構造
ヴァイオリンのように標準化された形状はない
表板は膨らんでいるが裏板は平らでヴァイオリンより薄いため弦の張力はヴァイオリン属より弱い
力木や魂柱がヴァイオリンと同様にある
響穴はヴァイオリン属の f 字形とは異なり c 字形のものが多いが、 f 字形や炎形のものもある。
肩の線はなだらか
指板はヴァイオリンに比べて扁平
フレットを持つが固定式ではなくガット弦等を巻きつけたもの
フレットは解放弦の5度上まで
駒も指板同様扁平で重音奏法が容易
弦は6本が基本、ヴァイオリンと違い4度調弦(D-G-A-E-A-D : トレブルの場合)
■奏法
脚に挟む(ヴィオローネは大きいので床に立てる)
弓はアンダーハンドで、ヴァイオリンと違いアップボウが強拍のようだ
■その他
Jordi Savallのコンサートではケルティック ヴィオルと言う楽器名が出て来る。これは実質的にヴィオルと同一と考えて良いか?
4. バロック音楽におけるヴァイオリン属
今日古楽器を使ったアンサンブルで使われているヴァイオリンとモダンヴァイオリンの違いについて
モダンヴァイオリンは、大音量を出すために
ネックの角度を付けた(本体に対する角度を大きく)→弦の張力を増す
魂柱とバスバーを大きくした
駒をずっしりしたものに交換
弦も高張力に耐えられる金属弦とする
弓は重さのあるもの
さらに
ネックが太い、指板が長い
と言うことらしい。
今のバロックヴァイオリンは、昔のバロックヴァイオリンをモダンヴァイオリンに改造したものをさらに元のバロックヴァイオリンに戻したもの、現代において、最初からバロックヴァイオリンとして作られたものがある。前者は本体に何ら手をいれていないので、音質には影響はないのだそうだ。
あと、外見上大きな違いは弓とその運弓法。モダンヴァイオリンの弓とは、反りの方向が逆。当初は文字通り弓なりに反っていたが、大きな音を出すデマンドに伴い、より大きな張力を生み出すために加工方法が発達して、現在のように逆弓なりになったと想像する。さらに、持ち方も、バロックの弓はモダンの弓とは違い中央寄りを掴むようにしている。前後のバランスを保ち、元弓と先弓の圧力を均一に保ちやすいが、モダン弓は弓の重量をかけて音量を稼ぎやすい特質があると想像する。本体よりもこの弓の構造的差異とこれに伴う運弓法の違いが音色に大きな違いをもたらしているのではないか。
5. 参考URL
私家版 楽器事典 – 楽器の形状、特徴が非常にわかりやすく説明されています
2017/08/05
んねぞう