妖精達の気配-Nov.2025

 アイルランドはゲルマンでもラテンでもない、ケルト人、ケルト文化の国である。キリスト教が入って来る前は、ケルトの神が自然のいたるところに宿っていた。キリスト教が入って来るとき、布教者の聖パトリックは、他の布教地とは違い、既存宗教を徹底的に排撃することをせず、緩い形で包摂するようにした。そのせいで、アイルランドの人々の心の中にはいまだにその神々の残影があり、それが妖精と言う形で見え隠れしているように思える。例えば、私が読んだシング(John Millington Synge)と言う作家の、イニシュモアの伝承の物語には、妖精の仕業と思われる寓話がいくつも載っている。また、今年テレビで小泉 八雲(ラフカディオ・ハーン)をモデルとした朝の連続ドラマが放映されているが、この人もアイルランド育ちだ。この素質が、島根の怪談を含む伝承に共鳴したということは想像に難くない

 私がわざわざシーズンオフのイニシュモア島を訪れたのも、その妖精の気配に耳を澄ませたいと思ったからだ。足掛け3日ほどの短い滞在だったが、目に入る景色の一つ一つで、妖精の遊び場や、悪戯の跡のように見えたり、物陰からの妖精の視線が感じられてもおかしくないと思った

2025/11
んねぞう