この数か月、訪ねたいと思っていた場所があった
静岡市と藤枝市の間にある宇津ノ谷峠、そこに明治時代に建設されたトンネルがあるという。国道1号線から脇道に逸れ、狭い道を登って、宿場の街道を通り抜ける。石畳の街道を、車で乗り入れて良いのか心配したが、民家の前に車が駐車してあるので、安心しながら、しかしだんだん道が狭くなって対向車が来たらいつでもバックできるように用心しながら登って行く。行き止まりに車3台が停められる駐車場があったので、車を停める
2018年に千葉県にある素掘りの隧道(隧道と言う呼び名がぴったりの隧道だった)を訪ねたことがあった。その隧道とほぼ同じ年代にできたトンネル。こちらは イギリス式のレンガ造りの堅牢な構造。ただし、レンガの大きさが普通よく見るレンガより小さいので、繊細な感じがする。
早速歩いて見る。日の出前に自宅を出発したおかげか、まだ誰もいない。着いた頃には朝8時を過ぎていて、日の当たるところは陽光をいっぱいに浴びていて輝いているのだが、この一帯は日が差さず、ひんやりとした空気に満たされている。静岡側からゆっくりと風が流れて来るのを感じる。しばらくトンネル内の写真が続くがご容赦頂きたい。私は、この真っ直ぐなトンネルの、古風なランタンの列と、それらの投げかける光に魅せられた。
千葉の素掘りのトンネルを歩いた時、背後から感じた、ぞわぞわするものがない。私の感性が鈍ってきたこともあるのだろう。また、レンガという人工臭の強い建造物が、集落の近くにある、ということもあるのかも知れない。山間の急峻な谷間にあるが、静岡というなんとなく陽性の土地、というものも作用しているのかも知れない
何枚かは白黒にして見た
前長230mのトンネルを抜けてしばらく歩くと藤枝側の県道に出る。陽光が燦燦と降っている
大正時代にできたというトンネル。現役で、車が轟音を上げて通り過ぎる。逆に恐怖を感じて早々に退散する
引き返して、今度はトンネルの上を通っている、旧東海道を歩いて見る。この道も、平成時代に新設されたトンネルの換気装置の管理用の道路のためになくなったり、江戸時代の後の地崩れ等によって違っているようだ。だから、この道は江戸時代の旅人が…等という感懐に浸っていたりはできない。だが、歩いていて、一番高いところに立ったところ、これは峠であろう、と信じたい。何の変哲もない、ただの山道、これが古の時代に、東海道という日本の大動脈の一部であった、ということを
東海道全体がこのような狭い道ではなかったのだろうが、前に中山道の一部を歩いた時も、このような狭い道になったことがあったので、街道というのは場所に応じて幅が違うのだろう。今の国道のような一定の規格、ということを考えてはいけないのかも知れない
そうこうしているうちに、舗装されたつづら折れの道に合流し、宇津ノ谷の宿場が見えて来た
2021/10/30
んねぞう