琵琶湖の所謂湖北地方のうち、菅浦を一日彷徨った。ここは特に文化庁により「菅浦の湖岸集落景観」として重要文化的景観に選定されている場所であり、鄙びた、人のあまりいない場所であろうと期待。
長浜よりレンタカーを借り、走らせること数十分、途中今年の台風の傷跡によるものだろう、何か所か道路の修復工事により片側交互交通による箇所を経て(因みに奥琵琶湖パークウェイは通行止め)、到着。駐車場はないのかも知れないと心配しつつ来たが、難なく停めることができた。天気も、長浜を走り出した時はどんよりと曇っていたが、着く頃にはご覧のように晴れていた。
まず目に付くのが「四足門」。これは集落の出入りの検札所だったらしい
目に付いた通りから歩き始める。車一台が通り抜けられるような道。
土壁が湖に面した面だけがボロボロになっている。如何に湖とはいえ、荒れる時は海と同じように猛威を振るうのだろう。
古い建物と、それほど古くない建物が混在している通りを、写真を撮りながら歩く。古い建物で特徴的なのは家々の壁が、多分焼き杉であることと、石垣が積まれていること。壁の傷み具合から、琵琶湖が荒れた時の猛威が偲ばれる。
集落を一通りめぐって、今度は集落の東の果てから延びる遊歩道を歩く。鉄板敷きの通路から土盛りになり、それも一部は崩れ落ちたり、枯枝、枯葉で通れなくなっている区間もあり、そこは湖岸を歩いて行く。
湖岸の適当な石に腰掛け、しばらく景色を眺める。湖のためだろうか、岸に寄せる波が非常に穏やかで、かつ海のように油断していると突然大きな波が押し寄せて来るということもない。晴れた、穏やかな湖岸、誰もいないところで、ゆったりと佇んでいる、至福の刻だ。
一旦集落に戻り、須賀神社に参拝。土足禁止、備え付けのスリッパに履き替えて石段を上る
高台に登って、また階段に腰を下ろして海を眺める。すると、下から孫を連れた老夫婦が上がって来た。お彼岸で、私が座っている近くのお墓にお参りに行くところらしい。駆け上がって来る孫にかける、気を付けて、そっちじゃないよ等の声が昇って来る。頭上には鳶の鳴き声。何と長閑な情景だろう
腰を上げて、もう一度集落を歩く。大分陽が傾いて来たので、そろそろ引き揚げようか。名残を惜しんで、振り返りつつシャッターを切る
琵琶湖については、滋賀県にあるということ、そして司馬遼太郎の「太閤記」からの知識位しかなかったので、Webでいろいろ調べたところ、湖北地方が一番山がちで、人もあまり住んでいなさそうだった。その中でも、菅浦という地域は、昔は水運主体の隔絶された土地柄で、観光地化もされておらず、人も少ないだろうと期待をしていて、その通りだった。また、当日の天気予報は雨のち曇りだったので、「雨上等!」とか言って奥さんの失笑を買ったりしたのが、結果的に晴天で、私にとっては願ってもないシチュエーションに恵まれた。秋の日差しを照り返し、湖岸にたぷたぷと寄せる澄んだ水と波音、私は長く忘れないだろう
2018/09/22
んねぞう